肖像画は、アートの歴史の中でも長く探究がなされてきたジャンルです。神々や貴族を描いてきた古代エジプト、ギリシャ・ローマ時代。宗教を伝える目的だった中世ヨーロッパ。描かれる対象が一般庶民にもなり個性や内面も描き始めたルネサンス期。新しい技法の開拓を始めた近代美術期を経て、マルチメディアを用いた現代へと移り変わっていきました。 どの時代にも肖像画の多くは画家の手によって描かれ、完成・未完成に関わらず一つの出力に落ち着いて鑑賞者の元に届けられます。 しかし、現代の画家は人間だけではありません。コンピューターシステムも画家たりうるのです。こうしたシステムは眠らず動き続け、彼らによって描かれる画は一つの完成系に落ち着くことはありません。 「未完の肖像画」 これは、コンピューターシステムが描き続ける完成することのない新しい肖像画の形なのです。